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茅野 政道; 永井 晴康
水環境学会誌, 36(3), p.74 - 78, 2013/03
福島第一原子力発電所事故による放射性物質の環境放出、及び大気拡散と地表汚染形成過程について、環境モニタリングデータ、大気及び海洋拡散シミュレーション、過酷事故解析シミュレーション等による解析から明らかになった状況について概説する。大気放出については、原子力機構が推定したI-131とCs-137放出量と炉内事象との関連から、放出率の推移とその要因を考察するとともに、国内外の他の推定結果との比較等によりその妥当性を検証した。海洋放出については、電力中央研究所及び原子力機構の推定結果による時間変動を示すとともに、国内外の他機関による総放出量を比較した。大気拡散と地表汚染形成過程については、原子力機構のWSPEEDI-IIによる拡散シミュレーションと環境モニタリングデータの比較により、航空機モニタリングで測定されたCs-137沈着量分布の形成過程を考察した。
乙坂 重嘉; 小林 卓也
水環境学会誌, 36(3), p.95 - 98, 2013/03
東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の事故によって大気中に放出された放射性核種の多くは、東方へ輸送され海表面に沈着した。また、原子炉の冷却のために放水作業が行われたが、それらの一部は破損した施設から漏洩し、海洋へ流出した。事故から約2年が経過し、国や自治体等による海域モニタリングや、多くの研究機関による海洋調査の結果、事故起因の放射性物質の拡散状況が少しずつ浮き彫りになってきた。本稿では、特に海水及び海底堆積物中の事故由来の放射性核種について、分布の概況と今後の課題について解説する。
松永 武; 長尾 誠也*
水環境学会誌, 25(4), p.193 - 197, 2002/04
チェルノブイリ原子力発電所の事故による水系へのインパクトの明確化と、淡水中での放射性核種の挙動研究という2つの観点から、チェルノブイリ事故による水環境の放射能汚染の状況とその成り立ちについて概説した。事故後の短期・長期における河川・湖沼の汚染の状況を述べ、環境への放射性核種の放出と関係づけた。現在、137Csと特に90Srがチェルノブイリ発電所近傍の河川・湖沼の汚染の主要核種になっていることを核種の放出形態と元素特性から述べた。事故後に取られた水系汚染対策にも説明を与えた。原研が行った現地での研究成果の1つとして、汚染形成に関する核燃料微細粒子の役割、ならびに、河川におけるアクチノイドの移行への溶存有機物の関与を示した。この水系汚染に関する広域的・経時的な研究はチェルノブイル事故固有の汚染形成問題を越えて、放射性核種の水系環境中の振る舞いについての一般的な理解と、さらに、食物連鎖までを含めた「生態圏移行モデル」の検証・改良にもつながっていることを指摘した。